シンギュラリティの娘たち(2)

今回はシンギュラリティの娘たち(1)に引き続き、Imagineガールズ誕生の背景をご紹介したいと思います。

いま、コンピューター技術の発展を背景に、さまざまな分野で長足の進化を遂げているテクノロジー業界。いまからおよそ30年後となる2045年ごろには、人類全ての知能を合わせたよりも賢いAIが、自らを改良し始める技術的特異点=シンギュラリティの時代がやってくると、多くの識者によって予測されています。

Imagineガールズの3人娘が生まれたのは、さらにその後の時代……そのころ、社会はどのような姿を見せているのでしょうか。

楽観的、悲観的、さまざまな予測が、さまざまな研究者や経営者によって提唱されていますが、Imagineガールズが生まれたのは、最も楽観的なポスト・シンギュラリティ後の世界です。

高度に発達したAIは慈悲深い神のごとき存在となり、人類の忠実なしもべとして、社会のあらゆる問題を解決していきました。人間自身もまた、自らの肉体や脳をテクノロジーの力で拡張することから始まり、やがては、人格そのものをデジタル空間にアップロードすることも普通になりました。

このような世代「ポスト・ヒューマン」たちは、デジタル空間上に新たな社会を構築し、そこで永遠の生命を謳歌するに至ります。この世界=VRワールドに、傷病や老いといった肉体的な制限、あるいはエネルギーや資源の枯渇といった問題は、一切ありません。それぞれの人格にとって、理想の社会が無限に存在する世界になっているのです。

一方、物理的な現実のほうは、やがてその物理的制限ゆえに、生活の場としては放棄されていきます。テクノロジーによる物理世界の超越=トランセンデンスに反対し、物理世界での生活に固執していた勢力も、やがては融和し、アップロード人格としてVRワールドで生きることになりました。

人っ子ひとりいなくなった地球では、自己複製能力を備えたナノボットたちが、せっせと全ての物質を、シリコンチップや、その他の計算資源に置き換えていきます。それだけでは飽きたらず、太陽系の全資源を総動員して、太陽のエネルギーを全て計算資源に変換する、ダイソン球の建設すら始まっています。

こうして、人間にとっての物理世界が本格的に失われ、いくばくかの時が流れました。地球が太陽を公転する速度に基づく時間軸では、わずか数年かもしれません。しかし、VRワールドの中では計り知れないスピードで時間が経過しています。VRワールドの基軸となるコンピューティングパワーが、天井知らずに増加しているためです。

そんな中、ある疑問が持ち上がりました。VRワールドは、原理的に、決定論的な世界です。つまり、必要な計算コストを投入しさえすれば、すべての事象、すべての人生は、生まれた瞬間に、その帰結が明らかになるのです。そのおかげで、「万人にとっての完璧な世界」が実現していることも確かです。しかし・・・

Imagineガールズの3人娘は、そんな時代に生まれました。

(つづきます)

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